2010年8月3日火曜日

ONE SHOT ONE KILL 〜兵士になるということ

 
 本日の昼のSANGOの会に参加する前に見てきた映画です。今週の金曜日まで、午前中1回のみの上映ということもあり。
 一言で云うと、アメリカ海兵隊員に入隊した新兵たちの訓練の様子を描いた作品です。「自由と平等の国」?アメリカにおいて、軍隊についてはその理念の治外法権にあることを明かすようなドキュメンタリーでありました。

 徹頭徹尾、昨日まで民間人だった若者が入隊したその日からキレタ状態の上官から徹底的に怒鳴られ、それに対する答えもほとんどスクリーム(叫び)に近い状態で応じなければなりません。「声を出せ!」ってシツコクシツコクやられるのでね。
 基本的に戦争が続いている国の当事国としての軍隊である、という認識に基づくのかもしれませんが、戦前の日本軍隊の「精神主義」を笑えません。二昔前の街頭での雄たけびを上げる新入社員研修、大学応援団の先輩から後輩の特訓どころの騒ぎじゃない。

 普通に見れば完全なる狂気です。狂っています。
 入隊した者で脱落した人間がいたのかは明らかになっていませんが、もとより普通よりちょっと困っている程度のアメリカの庶民の若者にとって海兵隊員は国の誇りであり、同時にそこで時を過ごすことは大学まで進学させてくれる社会的キャリアを与えてくれるところでもあり。その意味では日本の自衛隊にも近いのかもしれません。しかしそこで与えられるものは、彼らが望むデシプリン(規律)の精神じゃなく、合理性を失った、精神主義とさえもいえないような世界です。



 入隊する若者自身が自分自身の自己変革を願う、という動機の側面もあるかもしれませんが、上官たちに朝から晩までしつこく雄たけびの命令を受け、スクリームの応答をする姿は、もしかしたら戦前の日本の軍隊にも負けじ、あるいはそれを優に勝っているかもしれません。
 日本が負けたとき、アメリカの兵隊さんの余裕なり明るさなりに日本人が魅了されたところもあると聞き及びますが、今も昔もアメリカの新兵さんの入隊訓練は同じなのでしょうか?仮にそうなら、日本軍隊のみが精神主義とはとても思えませんね。
 あるいは、現代のアメリカ軍隊のほうが昔に比べて精神の余裕を失っているのかもしれないという仮定も立てたれます。だとしたら、アメリカ軍隊の士気の危機ぶりは相当なところにまで来ているのかな、と思ってしまいましたね。

 先週見た「アメリカ戦争する人びと」のいわば同系列で、こちらは軍隊の入隊訓練のドキュメンタリーですが、いずれもアメリカの暗部をえぐっています。

 もし、唯一この”アメリカのヘビーなリアル”が価値があるならば、この新兵訓練の様子を映像をじっくり寄りながら映しても良しとした「公開する態度」と、両作品とも日本人の監督がとった作品である、という点でしょうか。よくぞやった、という感じです。

 政治の大きなかけひきの裏で、小さなミニシアターではリアルなアメリカの一面を見ることが出来る。そして考える事ができる。これは大きな意味あることだと思います。

 そういえば上映前にこの作品の監督が挨拶を述べる、という意外なサプライズがありました。現在キャンプシュワブ基地に滞在する海兵隊員とつい最近話す機会があったとのこと。アフガンでの戦闘に備えて日本全国の基地を気象条件や地理的条件に合わせて移動しながら訓練しているそうです。

 私はこの映画を観ながら軍隊の狂気や戦争をしたがる馬鹿な人たちを嗤うことが出来るかもしれませんが、それを押し留めることが出来ない点において、未来の世代から「野蛮人の時代」に加担した人間の一人として記憶されることでしょう。未来から軽蔑される人間のひとりとして。忸怩たる思いがありますが、致し方ない。罪を背負って生きるしかありません。。。

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